危機一髪!大規模火災から免れる その3

 私はハリウッド映画でも見ているように茫然と火を見つめていました。この日はあいにく季節外れの台風の影響で、北から東よりの強風が吹いていました。まるでふいごのように炎を煽り、真っ黒な煙と火の粉を巻き上げながら、バキバキ、メキメキ、ドスンッ、ガタンッと何かが暴れているような音を立てて、まるで生き物のようにうねりながら炎が燃え上がっていました。
 火焔は30メートルほども立ち上がり、文字通り天を焦がすがごとく、下から見上げる姿はまるで火の竜が暴れているかのようでした。


わが家の全焼は免れない状況だった
 私は火事での奇蹟体験を思い出し、荒れ狂う風の中、御神塩を炎に向かって投げようとしましたが、つまんだ指先を開いた途端、炎の手下たちは御神塩を炎の方向とは反対のどこかに持ち去ってしまいました。私どもが火事に気付いてから20分が経過したころ、ようやく消防車が来ました。
 風も強風だったのは火の手を早めましたが、風向きは不幸中の幸いでした。もし、風向きが逆の南風だったら、被害の展開は全く違うものになっていたと思います。わが家は火元から見て南面の東側に位置しますが、町並みは、火元の北側の方へ住宅が密集して広がっています。しかもその一角は急坂の狭い道一本しか進入路がなく、袋状に近辺から切り離されています。消防車の到着や消火活動の遅かった経緯から見ても、もし南風だったら、消火活動はよりいっそう困難を極め、風の勢いにまかせて火はどんどん燃え広がっていたと思うのです。
 わが家は北面に全焼した3棟、西面を全焼した1棟に抱かれ、2方向からスッポリ炎に包まれるように建っていました。しかも風向きが北から東よりの強風で、わが家めがけて炎は燃えていました。
 わが家の屋根に火が移り、ボウボウと燃え始めたのを見たときは、間違いなく全焼すると覚悟しました。
 空が白み始めると、冷たい雨が降り出しました。午前6時半を過ぎたころに火は消し止められました。しかし全焼はやむを得ないと思われた火中のわが家は形をとどめてそこに建っています。わが家の北から西面は空襲の直後のような景色が広がっていました。=つづく=
(神奈川県 Y.H)
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