日本再発見 第5回 高齢者も元気な香港

海外から日本を見てみよう
 日本を離れて長期間、海外で生活してみると、日本にいては分からない文化の違いなどに気づくことがあります。この違いを身近な例を取りながら紹介します。日本の良さ、学ぶべきことなどがあらためて見えてくると思います。
 意外かもしれませんが、今私が住んでいる香港は平均寿命の男女平均が日本についで2位という?長寿国?です。
 では、高齢者を取り巻く環境はというと、かなり厳しいのが現状です。日本と同様、少子高齢化が進んでいる香港ですが、労働者向けの「強制退職積立金制度」は2000年に施行されたばかり、それまで社会保障制度が全くなかったのです。
 当然高齢者は自分で自分の身を守らなければならず、実際?現役で働いている?元気なお年寄りの姿をよく見かけます。
 日本の「バイク便」のような短時間で物を運ぶ仕事でもお年寄りが大活躍しています。
 もっとも香港ではバイクではなく、公共交通機関を利用するのですが、地下鉄の駅で伝票片手に大きな袋をかついでいるお年寄りの姿をよく見かけます。


ゆっくりしたサービスに寛容なお国柄
 香港の伝統的な?茶餐廳(チャーチャンテン)?と呼ばれる喫茶店と大衆食堂を併せたような店でも、年齢の高い店員がキビキビと働いています。
 歴史のある老舗の飲茶の店でも、おそらくそこで何十年も働いているのだろうという店員が、熱湯の入った大きなやかんを持ち、慣れた手つきで急須にお湯を注いで回ったり、セイロを積んだワゴンでテーブルの間を点心の名前を叫びながら回ったりしています。
 日本では最近?おひとりさま?という言葉が流行っているようですが、香港ではお年寄りの?おひとりさま?は珍しくありません。茶餐廳でゆっくりとミルクティーをすすりながらトーストをかじったり、飲茶の店で新聞を広げて点心をつまみながら何時間もくつろいだりしている?おひとりさま?のおじいさんの姿は香港では既に日常の風景の一つです。
 私がよく行く麺のお店にも元気なおばあさんがいて、店先で客にまず広東語で話しかけ、反応が悪いと英語、それでも違うと北京語で案内をする、毎度その切り替えの早さには舌を巻きます。
 おそらく97年の香港返還以降、北京語を勉強したのでしょう。
 先日、勤務先でいつものように出前を頼んだところ、しばらくしておじいさんがゆっくりした足取りで出前を運んできました。注文したサンドイッチはすっかり冷めていましたが、若い香港人の女性スタッフは「ありがとう」と言い、代金とチップをそのおじいさんに渡すと、おじいさんはニコニコしながら帰って行きました。
 サービス業にスピードと正確さが要求される日本ではまずありえない光景だと思いました。日本では店員は若者と相場が決まっている、速さが売りのファストフード店でも、香港では積極的に中高年の女性店員を採用しています。
 香港人のこのような寛容な精神が、高齢者の社会進出を促し、高齢者がいつまでも元気でいられるのではないかと思いました。