江戸しぐさ 第10回 ありがとうしぐさ

 日ごろ、私たちがよく使っている言葉に、感謝の気持ちを表すものとして、「ありがとう」という言葉があります。
 この語源は、「こんなにたくさんあるお店の中から私どもの店を選んでくださり、ありがとうございます。心より御礼申し上げます」という意味の省略語からきており、「よくあることではない=有り難い」という江戸商人の客への感謝と敬意を表した言葉です。


些細なことにでも感謝の気持ちを表そう
 「ありがとう」という言葉を言われて嬉しくない人はおそらくいないでしょう。しかし、この耳にして心地の良い言葉が最近は、悲しいことに、聞かれなくなっています。
 例えば、エレベーターに乗った時、小さな子供連れの方がいると、当然ドアを開けておいてあげますが、その方が降りる際、ひと言でも「ありがとう」と言ってくださったら気分が良いと思いませんか。
子は親を見て育つ
 それが残念なことに今は多くの場合、ないのです。もちろん、こちらは当然のこととしてやっているのですが、それでも、人間として、感謝の気持ちを表すのは一緒にいるお子さんのためにも必要だと思います。
 なぜなら、子供はどんな些細なことであれ、親を見て育つからです。
 最近見たテレビのコマーシャルで、イギリスでは、公共の場(交通機関や会社など)で次に来る人のためにドアを開けておいてあげるのが当然のこととして実践されているということを知りました。
 その映像の中では、ドアを開けておいてくれた人に次に来た人が、「ありがとう」と言い、言われた人は「どういたしまして」と返していました。
 ほんの小さなことですが、その小さなことが人と人とのつながり、社会の循環をつくっていくのではないでしょうか。
 何でも人にしてもらって当たり前と思っていたら、それはあまりにも独りよがりです。どんな些細なことにでも相手に感謝の気持ちを持てたらスムーズにいかないことでもうまくいくものです。
 まだ、言葉も話せない小さな子供に、親が最初に教える言葉の一つが「ありがとう」です。
きっとそこに一つの和ができる
 当然、言葉はまだ発することができませんから、頭を小さく縦に振り、会釈のような形になりますが、それでも、「ありがとう」の表れなのです。そうやって人は人への感謝の気持ちの表し方を学んでいくのです。
 さあ、私たちも、言葉を初めて覚えた子供のように、必要なとき、必要な相手にぜひ「ありがとう」と声に出してみましょう。きっとそこに一つの和ができるはずです。