平成のご巡幸 その1

「奇蹟の今上天皇」(PHP研究所・昭和60年刊行・小室直樹著)という本をかつて読んだことがある。
史上空前の偉大なる帝王、それが昭和天皇であるという。昭和20年までの動乱期に、破局に向けて暴走しようとする日本の手綱を引き締めようとされた昭和天皇の、判断・意見はほとんどの場合に正しかった。敗戦後、依然として玉座にとどまり得た君主は世界中を見渡しても昭和天皇以外にはいない。そして、日本国民を救った戦争終結のご聖断。このことが戦後の経済発展というもう一つの奇蹟を生み出した。


戦後まもなく行われた昭和天皇のご巡幸は
国民から熱狂的な支持を受けた

論旨は実に明快である。多くの人に読んでもらいたいが、この本はすでに絶版になり、入手するのはむずかしいかも知れない。
この本の中では、昭和天皇の昭和21年2月から始まった地方ご巡幸も、また奇蹟であると述べている。
ご巡幸のたびに国民は熱狂的に支持した。人並みが崩れ、昭和天皇は立ち往生され、靴を踏まれ、ボタンを取られることもおありであったという。興奮した群衆に囲まれては警備にも限界がある。九分九厘善良な国民でも、たった一人の不届き者がいれば、何が起きてもおかしくない状況であった。しかし、足かけ6年にも及ぶご巡幸でただの一度も事件は起きなかった。まさに奇蹟である。
「天皇の存在は米軍20個師団に相当する」マッカーサー
多くの敗戦国の為政者の末路と比較して、外国人には不思議な光景として映った。英国の新聞は「何もかも破壊された日本の社会では、天皇が唯一の安定点をなしている」と驚きを率直に述べている。マッカーサー元帥は「天皇の存在は、米軍20個師団の駐留にも匹敵する」と述べた。
昭和天皇は誠意を持って国民の声を聞かれ、そして励まされた。ご訪問される先々で日の丸がはためき、「君が代」が流れた。国民とともに歩まれる昭和天皇、それにこたえようとする国民の姿がそこにあった。(つづく)