江戸しぐさ 第4回 時どろぼう

今回は、「時どろぼう」についてご紹介したいと思います。
江戸時代、人々は自然と共に生活を送っていました。日の出と共に起床し、日の入りと共に床に就きました。現代に生きる私たちにはできそうでできない理想的な自然の法則に則った生活です。
現代の時計は一日を二十四等分する単純明快なものですが、明治時代までの日本では、「不定時法」という日の出から日の入りまでを六等分する方法を取っていました。春と夏では時間が異なっていました。一刻(現代の二時間)が二時間六分から一時間三十七分と差がありました。


江戸の人々は突然の訪問や立ち話で呼び止められるのを嫌った
江戸時代、大名たちは「大名時計」と呼ばれる時計を所有していました。また、お城には時計の調節を専門にする「土圭間番(とけいのまばん)」と呼ばれる役人が配属されていたといいます。
彼らの時刻の計測は非常に正確だったので、お城に出入りする商人たちは役人に合わせて時刻に敏感だったそうです。お金や物は借りてもあとで返すことができますが、過ぎてしまった時間は取り戻すことはできません。
それだけに江戸の人々は一日の時間をとても大事にしていたので、突然の訪問や立ち話で呼び止められるのを嫌っていたといいます。そして、時を奪う人のことを「時どろぼう」といいました。人に会いたい時には、事前に手紙を届けさせることが常識でした。
「時どろぼうは弁済不能の十両の罪」(当時の法律で十両盗むと死罪だったため)といわれるほど、特に商人、職人はこれを嫌い、また、他人にもこのようなしぐさをしないよう努めました。一分たりとも無駄にしたくない、そして、他人への迷惑を嫌った江戸の人々の心が表れているしぐさです。
よく、突然電話をしてきて自分のことばかりまくし立てるように話し、最後に謝ってくる人がいますが、これも一つの時どろぼうといえます。
自分の都合ばかり考えず、相手に対する思いやりや気遣いの心があればおのずと貴重な「時」を奪うことなく過ごせると思います。
時というのは想像以上にとても貴重なものです。しかし、皮肉なことにその大切さに気づくのはたいていの場合、だいぶ時がたってからのことが多いのです。
私たちは自分の時間も相手の時間も決して無駄にすることなく一日一日を有効に有意義に与えられた「時」を使い過ごしていきたいものです。